磯崎新と天竺と中田秀人

磯崎新の「都庁」―戦後日本最大のコンペ』(平松剛・著/文藝春秋)読了。おもしろかった。丁寧に取材していると思うし、その取材で得た情報をうまくまとめている。内容が詳細になると読みにくい場合があるが、この本は安心して読めます。丹下健三が単なる悪者でないのもいい。
おもしろいなと思ったのは、磯崎新東大寺の南大門を「私が文句なしに感動する唯ひとつの日本での建築物だ。イセ(伊勢神宮)にもカツラ(桂離宮)にもみられない、構築力がみなぎっている」(p.104)と評価していること。確かに東大寺のでっかい門はかっこよかったと記憶している。でも磯崎さんと東大寺という組み合わせが意外だった。この門をつくった重源というお坊さんがまたおもしろい人だったらしいのだが、これは本を読んでください。
さらに「おお!」と驚いたのは、この南大門の様式が一時期「天竺様(てんじくよう)」と呼ばれていたこと。天竺とはインドのこと。だけど東大寺南大門の様式とインドは何も関係がない。平安時代の「和様」とあまりに隔たりのある様式のため「天竺様」と名づけられたそうだ。誤解を避けるために現在では「大仏様(だいぶつよう)」と改称されたそうだが、磯崎さんのお気に入りは「天竺様」ということだ。そりゃそうだよね。
天竺というだけでうれしい。テレビで『西遊記』を夢中になって見ていた世代だから。しかも、つい最近、ソバットシアターの中田君の日記を読んでいたら「天竺」の話が出てきたのだ。中田君が仲間と8年かけて完成させた作品が川口のSKIPシティで上映された7月19日の日記だ。

こうやって今これを書いていても、
この数日間で、8年ぶりに再会出来た人の表情や、握手、
初めて観て下さって声をかけてくれる人達の言葉の数々が、
どんどんと思い返されて行く。

天竺から長安への帰り道のようだ。

思わず爆笑してしまったが、やっぱり感動する。完成してよかったよね。
ちなみに中田君の日記は、独自のユーモアがあってとてもおもしろいです。例えば7月4日。

シートベルトの構造ってどうなってるんだろう。。。

ゆっくり引っ張ると動いて、
力強く引っ張ると止まる。

水溶き片栗粉が中に詰まってるのかなぁ。。。

7月8日もいい。

こんな時にアトリエのPCが全く起動しなくなった!

原因不明。
のび太のお母さんを呼んで、斜め45度の角度で叩いてもらうしかない。

磯崎新と天竺と中田秀人という我ながら思わぬ展開でした。ところで、東京で育った同世代の中には、小学校時代に『西遊記』見た後に街中に遊びに行って堺正章岸部シローに出くわしたやつもいたのだろうか。どんな気分なんだろう。