5月25日 中西夏之展

5月25日(日)は午前中、高円寺の友人の家で話しこむ。突然電話して、とくに向こうも予定がなさそうなんで朝食をいっしょに食べることにしたんだけど、結局15時まで話しこんでしまった。この人、編集者なんだけど、かなりユニーク。「あんたが作家になったほうがいいんじゃないの?」と思う。この人に編集される作家は大変だろうな。だって編集者のが独創的だから。会話に謎がいっぱい。そして大学院の同級生K君に驚くほどよく似ている。いつか会わせたい。
友人のマジックリアリズムトークを堪能した後、渋谷に向かう。松濤美術館中西夏之の新作展。さすが!と思う。見るという体験の果てに絵画があることをよく心得た作家。視覚の実験としての絵画。絵画の発明。画家の言葉もパネルにして展示されていて、これがまたいい。昔はさっぱりわからなかったし、今も謎は多いが、その謎こそがポイント。しかも明晰な言葉で書かれている。言語によるヴィジョンの掲示に身を浸せるかどうかが、中西夏之のテキストを体験できるかどうかの分かれ目かも。
ハイレッドセンターの3人、高松次郎(故人)、赤瀬川原平中西夏之はアーティストとして特別な存在であることは今さらだが、それぞれが文章の達人でもある。リアルタイムでハイレッドセンターを知らない僕にとって、同じ傾向のアーティスト3人が集まったというよりは、まったく別々の個性のパラレルな関係という印象が強い。一瞬交差した3つの惑星。実態がどういう関係だったかはともかく、彼らの文章を比較するのもおもしろいだろう。高松次郎の文章の切れ味は格別。ジャスパー・ジョーンズヨーゼフ・ボイス、あるいはル・クレジオについて書いた文章が記憶に残っている。考えてみると午前中に会った編集者は、高松次郎の本を編集した人だった!赤瀬川さんは小説家としてもエッセイストとしても活躍している。迂回する思考と叙述。突然、たどりつく動かしがたい問い。
で、中西夏之なんだけど…、しびれるね。宇宙と交信しているかのよう。光を測量するイメージ。映像的な文章。ところが!残念なことに図録が売り切れてました。最終日の夕方に行ったのがいけなかったか。ほぼ直線に見える線を、大きな円の弧の一部として考え、遠くにある中心と対峙し、大きな円の外側にいることを意識する、というようなヴィジョンがとても新鮮。もっとイメージの強い言葉で書いてあるんだけど。
ハイレッドセンターの3人のテキストを比較する論文があるなら読みたいな。だれかやってないのだろうか?ご存知の方いたら教えてください。