「PORTRAITS」北島敬三展

7月4日にラットホールギャラリーで北島敬三さんの展覧会「PORTRAITS」を見てきた。すごい展示にため息。北島さんはこの「PORTRAITS」というシリーズで、白いバックに白いシャツを着た被写体をバストショット、横位置という構図で、何年にもわたり撮影を続けている。できるだけ様相が変わらないだろうという人をモデルに選んでいるそうだ。今回は3人の人のポートレートが選ばれている。ひとつの壁につきひとりのモデルのポートレートが複数点かけられている。壁面は3つ(1面はガラス)なので合計で3人の人間の時間をまたがった肖像にとりかこまれることになる。。
白につつまれた空間に眩暈がした。壁の白、フォトフレームの白、背景の白、シャツの白。
そして、何年かの間で変わる被写体の表情。表情と書いたけど、そんな言葉では言い表せないのはわかっている。もっと微妙な、個人の顔にまとわりついてくるもの。奇妙な知覚体験。
作品もいいけど、展示空間としても完璧。ホワイトキューブもこれくらい、ビシッとした仕事をしてくれると感動します。すごい。ただ白い壁に作品を並べたってのとは全然違う。本気の仕事。北島さんの撮影したポートレートも、形式を使ってどこまでできるかという挑戦。これはすごいこと。簡単にコンセプチャルとは言えない。もちろんコンセプトはある。でも、そのコンセプトはコンセプトを表現にするためにあるのではなく、実験の方法だ。
ラットホールギャラリーのウェブマガジンで北島さんのインタビューが読めます。
http://openers.jp/culture/kitamura/kitajima01.html
http://openers.jp/culture/kitamura/kitajima02.html
http://openers.jp/culture/kitamura/kitamura03.html
なぜか、ドナルド・ジャッドのことを思い出した。ぎりぎりに抑制した方法で、宇宙まで広がりを感じさせる表現をした人。ドナルド・ジャッドの場合、先行世代の美術作家の荒々しい表現に対する違和感もあっただろう。北島さんはスナップを撮って、その可能性をかなりのところまで追求して、その反対のスタジオ撮影までいったというのがおもしろい。
同じくラットホールギャラリーから刊行された北島さんの写真集もすごいでき。痺れます。